ターナーの夕陽

国際結婚・永住組にとって、「日本帰国」というのは、人生の大きな節目であり、心の支えでしょう。

タラップを降りた瞬間(今時こんなものは使いませんが)「あ~、生き返った」と一息つくのは至福の瞬間かと思います。

でも、現実的な話、「帰国する」ってけっこう大変なものです。

自分一人が帰るならいざ知らず、夫も子どももあれば、彼らのことも考慮しなければなりません。
家族で欧州→日本を往復するとなれば、チケット代だけで数十万円。
しかも、ポーランドの場合、平均的な所帯の収入は10万円~20万円ぐらいですから、普通の家庭人の場合、一生に一度か二度、家族連れで帰れたら万々歳といったところでしょう。

ポーランドズロチにとって、日本に帰ることは容易ではありません。

結婚前にこの計算が出来たとしても、そこまで深刻に考えていない人の方がきっと多数だと思います。

正直、帰国への道を絶たれたような中でホームシックがつのれば、心が病むのも当然でしょう。
今は元気な人だって、老いたり、病んだりした時、いつそういう気持ちに襲われるか分からないのですし。

そう考えると、「いざとなれば、いつでも帰れる」という考え方は、かえって心を弱くするのではないかと思うこともしばしばです。
昔のお嫁さんのように、親に「二度と実家の敷居をまたぐんじゃないよ」と言われ、自分でもそのつもりで、死地に赴くような覚悟で結婚する方が強くなれるのかもしれません。

そう言えば、室生犀星が美しい詩を謳っていますね。

ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの

よしや
うらぶれて 異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや

ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ

そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや

この詩は、「日本に帰りたいなあ」と思っていた時、たまたまウェブサイトで見つけたものです。

「ふるさとは遠くにありて思うもの」というフレーズは前から知ってましたけど、全編を通して読んだのは初めてだったので心に響きました。
特に「よしや うらぶれて 異土の乞食となるとても 帰るところにあるまじや」というのはガーンときましたね。

乞食はイヤだけど(笑)、「帰るところにあるまじや」という詩情はとてもよく分かります。

正直、もう「住むべき場所」ではないのですよ。今さら、自分の居場所があるとも思えないし。

遠くにあるから「いいな、いいな、帰りたいな」と思うだけで、いざ帰ってみると、それは自分の幻想だったという部分もあると思います。

私も本屋と回転寿司とキツネうどんは恋しいけど、それが生活の基盤ではないし。

ここまで来たら、帰国することは現実ではなくて、願望ですよね。

もはや日本に帰ることは海外旅行に過ぎず、もし永住帰国が叶ったとしても、そこからどうやって生活の手段を立て直すのかと問われたら、現実的な回答は出てきません。

それなら、「恋しい」という気持ちだけで日本に帰ったりせず、そのお金を、南アフリカや南米や好きな諸外国を回る資金に回したい……と考える私は、タフなのかケチなのか、ともあれ自分に余力があるうちは「帰るところにあるまじや」=「もう一度、生活を立て直す場所ではない」という心境ではあります。

そんなことを考えていたら、次のような書き込みを見つけました。

海外居住体験のないジジイの横槍で、ごめん。
トピック見て、思い出しました。
室生犀星の詩に「ふるさとは遠きにありて思うもの」と
ありますよね。
親友、萩原朔太郎の解説では、望郷の念はあっても、
故郷に居たところで「帰るところではないなあ」と詩の
一節もあります。

私自身、国内ですが、故郷を捨て(追い出されて)
トシ取って、切なく望郷の念は強くなれど、さりとて
帰らないほうが自分の為だとの心境(心の問題)です。

トピぬしさまの「望郷」を逆手に取り、海外で「和の心」
「大和の匠、心情、恥の構造」などなどを外国人に伝える
方法、手段は、いっぱいあると思います。
卑近な一例ですが「風呂敷の使い方紹介」ですか。
新たな道は開けてくるチャンスは多いと思います。

日本とは、遠くから眺めて懐かしむ国だと捉え、開き直って
みてはいかがでしょう?

故郷とは縁を切ったジジイのたわ言で、レス不要です。

『日本とは、遠くから眺めて懐かしむ国』。ほんとにその通りです。

生活の基盤もなく、社会関係もほとんど存在せず、7年もブランクがある今、そこに私の知っている日本は多分ないと思います。

半年ほど遊んで暮らすにはいいけれど、子どもも学校にやらないといけない、生活費も稼がないといけない、家族みんなが住む場所だってもちろん、そういう実生活を考えたら、やはり現実ではないのですよ。

「帰国すれば、もっといい暮らしがある」というのは、やはり幻想だろうな、と。

とはいえ、「いつか帰れる」「日本に帰れば何とかなる」という希望はとても大きな心の支えだと思います。

私も「老後は日本」というプランを捨ててはいないし、その為の準備もちょこっとしているような感じ。ある意味、仕事をする上での大きなモチベーションにもなりますよね。

ふるさとは、遠くから眺めて懐かしみながら、一方で幻想を現実にするための働きかけもする、とにもかくにも何か打ち込んでいるうちに、いい運気が流れてくるのかもしれません。


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