Poproszę to – これ、ください -
『Poproszę to(ポプロッシェン トォ)』
読むのも聞くのも難しいポーランド語の中で、私が使いこなせた数少ない言葉の一つ。
意味は、『これを下さい』。
買い物する際、品物を指さして、こう言えば、たいていの店員さんは分かってくれる。
中にはキョトンとして、「何を言ってる?」という顔をされる方もあったが、それは大抵、こちらがまさかポーランド語を話すとは思っていなかった場合。東洋人がポーランド語を話すとは、誰も期待してないんだな。
その意外さと発音のまずさから、首を捻られも、『Poprosze to』、そう言えば、とりあえず意志は通じる。
もちろん、数字からして『one two three』ではなく、『jeden dwa trzy』と、全く違う読みをするため、たとえ親切に店員さんが値段を教えてくれたとしても、『*** *** 』まったく数字が分からない。
こちらはただ値札を見ながら、当てずっぽうで、しわしわになったzloty(ズオティ)札を出すだけだ。
1zloty(ズオティ)= 約32.3円。
パン一つが0.8zl、200mlのジュースが1.3zl、タクシーの最初のワンメーターが15zl、と聞けば、日本円に比べていかに物価が安いか分かるだろう。むろん、地元の人の収入を考えれば、決して安くはない値段なのだが。
もっとも印象に残っているのが、南部のタトラ山地から特産のスモークチーズを売りに来ていたおじさんとのやり取り。
私は自信を持って、木箱の上に並べられたチーズの一つを指さし、『Poprosze to』と言ったのだが、おじさんはきょとんとして全然分かってくれない。・・というより、信じられない様子。私の連れに、何度も、「彼女は何と言っているのか」と聞き直して、ようやく私がポーランド語を話していることに気付いてくれた。
スモークチーズは匂いもきつくて、非常に塩辛かったが、粉状にすり下ろして、スパゲティやグラタンにかけたら美味しそう。
思いがけなくチーズが売れて、嬉しそうなおじさんに、別れ際の言葉は、
『Barzo Dziękuje(バルゾ ジャンクイエン),
Dowidzenia(ドヴィゼニア)』。
「どうもありがとう、さようなら」
初稿:02年初夏


